視野を狭めると視えるもの（副院長が形歯会報に寄稿）

山形県歯科医師会５月広報誌にて、副院長の大瀧真太郎がコラム執筆を担当いたしました。

当院で使用していますルーペとデジタルマイクロスコープについて書いております。

 

 

 

わたしの仕事場（山形県歯科医師会2022年5月広報誌より）

「Seeing is Believing」日本語訳すると「百聞は一見に如かず」となるようだが、英文の方が正しいニュアンスだと感じる。何の話かと言うと、今回紹介するルーペとデジタルマイクロスコープ(ヨシダ/NextVision)を使った感想である。

 

筆者は主に2.5倍と6倍のルーペを使用し、拡大視野を得たい時には最大80倍まで拡大できるデジタルマイクロスコープで確認する、という診療スタイルに落ち着いている。

このスタイルが今後変わる事もあるかもしれないが、少なくとも裸眼や低倍率の視野に戻ることはない。そう言い切れるくらい「視える」事の恩恵は大きいと感じている。

　

特にNextVisionは使用法にかなり自由度があり気に入っている。

筆者はマイクロスコープに興味はありつつも、高額機器である事と使いこなせるかの不安から導入にはずっと二の足を踏んできた。ただこの製品はそういった導入のハードルが低くなっており、当院でもユニット入れ替えの際にオプションとしてつけるだけでスムーズに導入できた。直感的な操作が可能で口腔内写真などは練習せずにすぐ撮影できるし、慣れればモニターを見ながらの診療も可能である。筆者は撮影した画像を見せて説明する事が多いが、患者さんの理解度は格段に高くなったと感じている。

4K画質で大画面モニターに表示できるので、患者さんの受けるインパクトは大きいようだ。

 

先日インレーを撤去した患者さんに二次カリエスになっている事を説明した際、

『画面を見てびっくりしました。歯は治療したら治るものだと思っていたけど違うのですね。治療するたびどんどん無くなっていく事がわかりました。これから大事にしないといけませんね。』

と話をいただいた。

理解度は人それぞれだが、拡大画像を見ることでそこまで感じてくれる患者さんもいるのである。

 

自分としても、6倍ルーペやデジタルマイクロスコープを常に使うようになってから臨床が楽しくなった。今までなら診断に苦慮していた症例や、思い通りの治癒が得られず疑問に思ったケースが、細部まで「視える」事だけで解決する事を経験したからである。自分にとってはその後の診療スタイルに影響を与えるエポックメイキングな出来事であった。

 

冒頭の一文は、その頃にふと目にした言葉である。

「Seeing is Believing」

こう聞いて歯の拡大視野の事しか浮かばないのは、きっと職業病なのだろうと思う。

 

（大瀧真太郎　記）